新型コロナウイルスの流行にウクライナ侵攻。不透明な時代だからこそ、必要になるのは「想像力を育てる学び」だと劇作家の平田オリザさんは言う。
近年力を入れる演劇教育では、異なる文化や価値観を持った人たちを演じることで、他者への理解が深まるという。
なぜいま、想像力を育てる学びが必要なのか。それは、どんなことを通じてつちかわれるのか。平田さんに聞いた。
他者を演じることの意味
――「東京ノート」などの代表作がある平田さんですが、戯曲はどのようにして書かれているのですか。
劇作家によってタイプが分かれると思うのですが、どうしても必要なとき以外、僕はほとんど取材はしません。
取材をすると、その取材対象に引っ張られ過ぎてしまうので。劇作家というのは個別の事象ではなく、もっと普遍的なものを書かなければいけないと思っています。
たとえば科学者を主人公にした戯曲を書く場合、科学の本だけではなくて、科学者が書いたエッセーなどをたくさん読むようにしています。
そうやって彼らの思考様式や物の見方を体に落とし込んでいって、あくまでも科学者がどのように物事を考えるか想像する、想像力が大事だと思っています。
僕が今、力を入れている演劇教育でも、伸ばしたいのは他者を理解する力です。
これまで日本で演劇教育と言うと、情操教育とか、せいぜい表現教育みたいなことが言われてきました。しかし本当に大事なのは、他者を演じることで「この人はなぜ、こんなことを言ったのだろう」とか「私ならこういうことはしないのにな」みたいなところから、異なる価値観、異なる文化的な背景を持った人に対する理解を広げていくことだと思っています。
身につけてほしい三つの力
――社会が多様化する中で、より大切になってくる力ですね。
よく「最近の子どもの読解力は低下している」と言われますが、僕は低下していないと思っています。
子どもの能力が下がったわけ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル